配当貴族指数はインデックス投資のリターンを長期的に上回ってきたことで有名な株価指数です。
この記事では、配当貴族指数への投資を検討している人向けに
- 配当貴族指数に選ばれる銘柄の条件
- 構成銘柄のリスト一覧
- 配当貴族指数の長期リターン
を解説します。
配当きぞくん
配当貴族はスゴいのじゃ。
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配当貴族指数とは?
配当貴族指数は、米国株の連続増配銘柄だけを集めた株価指数です。基本的に、25年以上連続増配銘柄だけで構成されています。
正式名称は「S&P500配当貴族指数(Dividend Aristocrats)」といいます。株価指数は、S&Pグローバル社が管理しています。
加重方法 | 均等加重平均 |
---|---|
リバランスの頻度 | 1月/4月/7月/10月 |
算出開始日 | 2005年5月2日 |
リバランスは年4回
構成銘柄のリバランスは、1月/4月/7月/10月の最終取引日取引終了後に実施することが決められています。3カ月おき年4回の頻度ですね。
指数構成銘柄数をNとすると、各銘柄の割合が1/Nとなるように均等分散されます。リバランスを行う際に基準となる株価は、最終取引日から5取引日前の終値になります。
- 実施日:1月/4月/7月/10月の最終取引日
- 基準株価:リバランス実施日から5取引日前の終値
リバランス実施月の最終取引日から5取引日前の終値によって銘柄ごとの指数組入株式数が決定したあと、最終取引日の取引終了後にリバランスが行われます。
構成銘柄の条件
配当貴族指数には、次のような条件を満たした銘柄だけが指数に組み込まれます。
配当貴族の条件
配当貴族指数の増配基準
25年以上の連続増配は、配当権利落ち日(Ex-Date)を基準にした暦年(Calendar Year)の年間配当額が前年より増えているかどうかで判断されます。会計年度ベースの年間配当が増配されているかどうかは一切問いません。
配当貴族指数に採用された銘柄の年間配当が前年以下になったときは指数から除外されます。除外タイミングは四半期ごとのリバランス時に除外されることもあれば、毎年1月の構成銘柄入れ替えで除外されることもあります。
配当貴族指数では、上記のように会計年度と暦年にズレがある銘柄は、暦年の年間配当を基準に増配記録をカウントします。年間配当には定期配当のみが含まれ、特別配当などのイレギュラーな配当は除外されます。
実際に具体例を出して説明しましょう。配当貴族指数の構成銘柄であるカーディナルヘルス(CAH)の会計年度は、7月スタート6月締めとなっていて暦年とズレがあります。
会計年度の配当履歴(CAH)
上記は配当権利落ち日を基準にした会計年度の増配履歴です。1995年と1996年の年間配当が同額で増配がありません。すなわち、増配記録が途切れています。
増配開始年は1997年となり、 25年以上連続増配の条件を満たさないことになります。
暦年の配当履歴(CAH)
一方、配当権利落ち日を基準にした暦年の年間配当では1994年が0.0338ドル、1995年が0.0356ドル、1996年が0.0378ドルとなっていて毎年キッチリ増配されています。
結果として増配開始年が1985年となるため、25年以上連続増配の条件を満たすことになります。つまり、配当貴族指数が採用している増配基準が「配当権利落ち日×暦年」だからこそ、カーディナルヘルス(CAH)は指数構成銘柄になれているわけです。
ちなみに、配当貴族指数と配当チャンピオンでカーディナルヘルス(CAH)の連続増配年数が異なるのは、増配基準日に違いがあるためです。
【増配基準日の違い】
- 配当貴族指数:配当権利落ち日
- 配当チャンピオン:配当支払い日
Check 配当チャンピオンと配当貴族指数の違い
配当貴族指数の配慮事項
スピンオフや株式分割された銘柄の扱い
2013年1月1日以降にスピンオフされた銘柄は、スピンオフ前の増配実績がスピンオフ後も割り当てられます。また、スピンオフや株式分割により1株配当が減少しても、分割割合を考慮した配当金が減配していなければ増配実績はそのまま引き継がれます。
スピンオフのルールが適用されて連続増配年数が繰り越された銘柄に、アッヴィ(ABBV)とアボット・ラボラトリーズ(ABT)があります。スピンオフ時期はちょうど2013年でした。
ちなみに、スピンオフした連続増配銘柄にはフィリップモリス(PM)とアルトリアグループ(MO)もありますが、こちらはスピンオフ時期が2008年だったため増配実績が繰り越されませんでした。そのため、25年連続増配の条件を満たしていない扱いになってます。
銘柄分散の基準
配当貴族指数の構成銘柄数は、最低40銘柄と決められています。もし毎年1月に実施する年次見直しのタイミングで配当貴族の条件を満たす銘柄が40未満になったときは、20年以上連続で増配を継続している銘柄に範囲を拡大することができます。
範囲を拡大したときは、指数構成銘柄が40に達するまで配当利回りの高い順に新規銘柄が組み込まれます。
連続増配年数以外の条件は引き続き残るので、これら条件を満たした銘柄の中から配当利回りが高い順に選択されることになります。
- S&P500の構成銘柄
- 時価総額30億ドル以上
- 1日平均取引額が500万ドル以上
- 20年以上連続で増配を継続している
上記条件に拡大しても40銘柄に届かない場合は、連続増配年数を除いた3条件を満たす銘柄のなかから配当利回りが高い順に銘柄分散の基準を満たすまで新規銘柄が組み込まれることになっています。
セクター分散の基準
配当貴族指数にはセクター分散の基準があり、1セクター30%以上になってはならないと決められています。なお、セクター分類は世界産業分類基準(GICS)に従うことになっていて、全11セクターに分類されます。
世界産業分類基準のセクター分類
セクター | 英語表記 |
---|---|
エネルギー | Energy |
素材 | Materials |
資本財 | Industrials |
一般消費財 | Consumer Discretionary |
生活必需品 | Consumer Staples |
ヘルスケア | Health Care |
金融 | Financials |
情報技術 | Information Technology |
コミュニケーション | Communication Services |
公益 | Utilities |
不動産 | Real Estate |
もし毎年1月の年次見直しの際に1セクターの割合が30%以上になったときは、20年以上連続で増配を継続している銘柄に範囲を拡大することができます。
範囲を拡大したときは、1セクターの割合が30%未満になるまで配当利回りの高い順に新規銘柄が組み込まれます。
- S&P500の構成銘柄
- 時価総額30億ドル以上
- 1日平均取引額が500万ドル以上
- 20年以上連続で増配を継続している
上記条件に拡大しても1セクターの割合が30%以上になるときは、連続増配年数を除いた3条件を満たす銘柄の中から配当利回りが高い順にセクター分散の基準を満たすまで新規銘柄が組み込まれます。
配当貴族指数の銘柄リスト
Ticker | 企業名 | セクター |
---|---|---|
ABBV | アッヴィ | ヘルスケア |
ABT | アボット・ラボラトリーズ | ヘルスケア |
ADM | アーチャー・ ダニエルズ・ミッドランド | 生活必需品 |
ADP | オートマティック・ データ・プロセッシング | 情報技術 |
AFL | アフラック | 金融 |
ALB | アルベマール | 素材 |
AMCR | アムコア | 素材 |
AOS | AOスミス | 資本財 |
APD | エアープロダクツ・ アンド・ケミカルズ | 素材 |
ATO | アトモス・エナジー | 公益 |
BDX | ベクトン・ディッキンソン | ヘルスケア |
BEN | フランクリン・リソーシズ | 金融 |
BF.B | ブラウン・フォーマン | 生活必需品 |
BRO | ブラウン・アンド・ブラウン | 金融 |
CAH | カーディナルヘルス | ヘルスケア |
CAT | キャタピラー | 資本財 |
CB | チャブ | 金融 |
CHD | チャーチ・アンド・ドワイト | 生活必需品 |
CHRW | CHロビンソン・ワールドワイド | 資本財 |
CINF | シンシナティ・ ファイナンシャル | 金融 |
CL | コルゲート・パルモリーブ | 生活必需品 |
CLX | クロロックス | 生活必需品 |
CTAS | シンタス | 資本財 |
CVX | シェブロン | エネルギー |
DOV | ドーバー | 資本財 |
ECL | エコラボ | 素材 |
ED | コンソリデーテッド・エジソン | 公益 |
EMR | エマソン・エレクトリック | 資本財 |
ESS | エセックス・プロパティー・トラスト | 不動産 |
EXPD | エクスペディターズ・インター ナショナル・オブ・ワシントン | 資本財 |
FAST | ファスナル | 資本財 |
FRT | フェデラル・リアルティ・インベストメント・トラスト | 不動産 |
GD | ゼネラル・ダイナミクス | 資本財 |
GPC | ジェニュイン・パーツ | 一般消費財 |
GWW | W.W.グレインジャー | 資本財 |
HRL | ホーメル・フーズ | 生活必需品 |
IBM | IBM | 情報技術 |
ITW | イリノイ・ツール・ワークス | 資本財 |
JNJ | ジョンソン・ エンド・ジョンソン | ヘルスケア |
KMB | キンバリー・クラーク | 生活必需品 |
KO | コカ・コーラ | 生活必需品 |
LIN | リンデ | 素材 |
LOW | ロウズ | 一般消費財 |
MCD | マクドナルド | 一般消費財 |
MDT | メドトロニック | ヘルスケア |
MKC | マコーミック | 生活必需品 |
NDSN | ノードソン | 資本財 |
NEE | ネクステラ・エナジー | 公益 |
NUE | ニューコア | 素材 |
O | リアルティ・インカム | 不動産 |
PEP | ペプシコ | 生活必需品 |
PG | プロクター・ アンド・ギャンブル | 生活必需品 |
PNR | ペンテア | 資本財 |
PPG | PPGインダストリーズ | 素材 |
ROP | ローパー・テクノロジーズ | 資本財 |
SHW | シャーウィン・ウィリアムズ | 素材 |
SJM | JMスマッカー | 生活必需品 |
SPGI | S&Pグローバル | 金融 |
SWK | スタンレー・ブラック ・アンド・デッカー | 資本財 |
SYY | シスコ | 生活必需品 |
TGT | ターゲット | 一般消費財 |
TROW | Tロウ・プライス・グループ | 金融 |
WMT | ウォルマート | 生活必需品 |
WST | ウェスト・ファーマ シューティカル・サービシズ | ヘルスケア |
XOM | エクソンモービル | エネルギー |
Check 【配当貴族65銘柄】本日の株価上昇率ランキング&リアルタイム株価チャート一覧
配当貴族指数のセクター分布
セクター | 銘柄数 | 割合 |
---|---|---|
エネルギー | 2 | 3.1% |
素材 | 8 | 12.3% |
資本財 | 15 | 23.1% |
一般消費財 | 4 | 6.2% |
生活必需品 | 14 | 21.5% |
ヘルスケア | 7 | 10.8% |
金融 | 7 | 10.8% |
情報技術 | 2 | 3.1% |
コミュニケーション | 0 | 0.0% |
公益 | 3 | 4.6% |
不動産 | 3 | 4.6% |
合計 | 65 | 100% |
コミュニケーションサービスセクター以外の10セクターが構成銘柄に含まれています。最もウェイトが高いのが資本財セクターと生活必需品セクターで同率になっています。
配当きぞくん
1セクター30%を超えないようにコントロールされているのじゃ。
配当貴族指数は市場平均を上回る
長期リターン比較
下記のグラフは、配当貴族指数とS&P500指数の株価上昇率を比較したものです。配当貴族指数は「SPDAUDP」、S&P500指数は「^GSPC」の株価データを使っています。
2008年1月2日の終値を100%にあわせて、2024年1月2日までの株価上昇率をグラフにしました。配当(分配)金を含まない純粋な株価どうしの比較です。
グラフを見てもらうと分かるとおり、配当貴族指数がS&P500指数のリターンを上回っています。2008年~2024年の16年間で配当貴族指数は約3.62倍、S&P500指数は約3.27倍という結果になりました。
1年ごとの年次リターン比較
続いて、1年ごとのリターンを年初(終値)と年末(終値)で比較します。配当金(分配金)を含まない株価上昇率になります。
年次リターン(過去16年分)
期間 | 配当貴族 | S&P500 | リターン差 |
---|---|---|---|
2008年 | -22.96% | -37.58% | +14.63% |
2009年 | +19.16% | 19.67% | -0.51% |
2010年 | +14.61% | 11.00% | +3.61% |
2011年 | +4.71% | -1.12% | +5.84% |
2012年 | +12.71% | 11.68% | +1.03% |
2013年 | +26.41% | 26.39% | +0.02% |
2014年 | +14.11% | +12.39% | +1.73% |
2015年 | -1.41% | -0.69% | -0.72% |
2016年 | +10.73% | +11.24% | -0.50% |
2017年 | +18.11% | +18.42% | -0.30% |
2018年 | -5.31% | -7.01% | +1.70% |
2019年 | +25.59% | +28.87% | -3.12% |
2020年 | +5.61% | +15.29% | -9.68% |
2021年 | +24.90% | +28.79% | -3.90% |
2022年 | -7.93% | -19.95% | +12.02% |
2023年 | +5.62% | +24.73% | -19.11% |
平均 | +9.04% | +8.87% | -0.08% |
過去15年の年次リターンでは配当貴族指数がS&P500指数を年平均0.08%下回っています。年次リターンの勝率は約50%(8勝8敗)で引き分けとなっています。
特に目を引くのは2008年の年次リターン差+14.63%ですね。配当貴族の不況に強い特徴が見て取れます。
配当きぞくん
連続増配銘柄は強いのじゃ
ちなみに、S&P500指数を長期的にアウトパフォームしてきたのは配当貴族指数だけではありません。
配当王、配当公爵もS&P500指数を長期的にアウトパフォームしています。
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