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米国株で配当金生活したときの税金と社会保険料:配当年収ごとの試算結果を公開

【配当税率】下げる方法

米国株で配当金生活するときの税率は思いのほか低く抑えることができます。配当金生活では税金だけでなく社会保険料もコストになりますが、これも知識があれば非常に低くすることが可能です。

そこで今回は、米国株で配当金生活したいと考えている人のために、配当収入しかないケースの配当税率と社会保険料を同時に抑えるテクニックを紹介します。

この記事は、技術評論社から出ている著書の中身をブログ用に見やすく編集したものです。

出版社のご厚意で本の無料公開が実現しました。ぜひ最後までお読み下さい。

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ひろめ

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配当金生活するときの社会保険料

米国株で配当金生活するときの社会保険料は、国民年金保険料・国民健康保険料・介護保険料(40歳以上)を支払うことになります。

社会保険料

  • 国民年金保険料
  • 国民健康保険料
  • 介護保険料(40歳以上)

これら社会保険料は前年所得によって金額が決定します。収入が配当金のみであれば、配当にかかる課税方式を住民税で申告不要にすることで前年所得をゼロにすることが可能です。

そこで次からは、前年所得がゼロになったときの社会保険料が大体いくらになるかについて見ていきたいと思います。

前年所得ゼロだと社会保険料はいくらになるのか?

前年所得がゼロになると次のような社会保険料の免除が受けられます。

前年所得ゼロのとき
  • 国民年金保険料:全額免除(要申請)
  • 国民健康保険料+介護保険料:7割減額
配当きぞくん

配当きぞくん

上記の免除制度について知りたいときは次のリンクをチェックするのじゃ。

すべての免除制度をフル活用することで「社会保険料の合計額=国民健康保険料+介護保険料」という図式が成立します。

国民健康保険料と介護保険料は、自治体によって価格が異なります。そこで、全国のなかでも保険料が高い部類に入る広島市で令和4年度(2022年度)の社会保険料を試算しようと思います。

前年所得ゼロの社会保険料(広島市)

世帯種別39歳以下40歳~64歳
(介護分込み)
単身世帯年額1万9212円年額2万3306円
家族世帯年額3万8552円年額4万4975円
試算条件

  • 単身世帯:独身1人
  • 家族世帯(39歳以下): 夫婦2人(39歳以下)+子ども(39歳以下 )
  • 家族世帯(40歳~64歳):夫婦2人(40~64歳)+子ども(39歳以下)

国民健康保険料・介護保険料は自治体によって異なるものの、保険料が高い広島市でも単身世帯で年3万円以下になりました。7割減額が効いています。

配当きぞくん

配当きぞくん

思った以上に安くてイイ感じじゃ♪

国民健康保険料は全額免除申請を行えばゼロになります。したがって、単身者が配当金生活するときの社会保険料は全国どこであってもトータル年3万円以下と考えることができます。

配当金生活を目指す人にとって、社会保険料をここまで下げられる事実というのは、かなりの追い風になると思います。

あとは生活費さえ下げることができれば、配当金生活のハードルは思いのほか低くなります。

配当金生活するときの配当税率

米国株の運用で配当金生活するとなると、当然収入は配当金のみとなります。そこで次のような条件を設定し、米国株の年間配当ごとに具体的な税額計算をしてみたいと思います。

米国株100%のとき

試算条件

  • 基礎控除:48万円
  • 社会保険料控除:2万5109円(前年所得ゼロ)
  • 米国株の配当以外の収入:なし
  • 外国税額控除の繰越控除制度:利用なし
  • 住民税の課税方式:申告不要

社会保険料を抑えるために住民税の課税方式は、すべて申告不要を選択します。こうすることで社会保険料の計算に使われる前年所得をゼロにできるからです。

前年所得ゼロのときの社会保険料控除として2万5109円を設定しました。この金額は、上記広島市の試算結果(単身世帯かつ40歳~64歳)の数字をそのまま持ってきています。国民年金保険料は全額免除、国民健康保険料・介護保険料は7割免除を適用した金額です。

米国株の配当収入しかないとき

配当収入 還付される所得税 配当税率
(所得税+住民税)
総合課税 申告
分離課税
100万円 137,835円 137,835円 14.22%
200万円 275,670円 246,864円 14.22%
300万円 413,505円 331,549円 14.22%
400万円 551,340円 416,234円 14.22%
500万円 689,175円 500,919円 14.22%
600万円 741,613円 585,604円 15.64%
700万円 775,248円 670,289円 16.93%
800万円 792,220円 754,974円 18.10%
900万円 795,225円 839,659円 18.67%
1000万円 747,793円 924,344円 18.76%
配当
収入
還付される所得税 配当税率
(所得税+住民税)
総合課税 申告分離課税
100万円 137,835円 137,835円 14.22%
200万円 275,670円 246,864円 14.22%
300万円 413,505円 331,549円 14.22%
400万円 551,340円 416,234円 14.22%
500万円 689,175円 500,919円 14.22%
600万円 741,613円 585,604円 15.64%
700万円 775,248円 670,289円 16.93%
800万円 792,220円 754,974円 18.10%
900万円 795,225円 839,659円 18.67%
1000万円 747,793円 924,344円 18.76%

所得税の配当課税方式を総合課税と申告分離課税でそれぞれ還付額を記載しました。還付額が少ないほうは選ばないので見え消しにしています。

配当収入100万円のところは還付額が同じなので、外国税額控除限度額が大きい申告分離課税を選択しています。

上記の結果を見て、思った以上に税率が低く抑えられていると感じる人が多いのではないでしょうか。

米国株の年間配当が500万円以下なら所得税と住民税の合計税率は14.22%まで下がります。年間配当が1000万円あったとしてもトータル税率は18.76%です。

米国株80%+英ADR15%+日本株5%のとき

米国株投資家のなかには、外国所得税0%のADRや日本株を保有している人も多いと思います。そこで、米国株80%、イギリスADR15%、日本株5%のポートフォリオで配当金生活を行うときに配当税率がどうなるか試算してみます。

試算条件

  • 基礎控除:48万円
  • 社会保険料控除:2万5109円(前年所得ゼロ)
  • 配当以外の収入:なし
  • 外国税額控除の繰越控除制度:利用なし
  • 住民税の課税方式:申告不要

試算条件は、先ほど米国株だけで配当金生活したときの配当税率を計算したときと同じにしました。配当内訳にADRと日本株が含まれている部分にだけ違いがあります。

住民税の課税方式は、社会保険料の負担を最小限にするために申告不要を選択したものとして税率計算します。

米国株80%+英ADR15%+日本株5%のとき

配当収入 還付される所得税 配当税率
(所得税+住民税)
総合課税 申告分離課税
100万円 139,892円 145,242円 11.78%
200万円 275,670円 206,864円 12.22%
300万円 413,505円 271,549円 12.22%
400万円 551,340円 336,234円 12.22%
500万円 733,503円 400,919円 11.33%
600万円 772,243円 465,604円 13.13%
700万円 810,983円 26,289円 14.41%
800万円 833,060円 18,974円 15.59%
900万円 841,170円 11,659円 16.65%
1000万円 798,843円 4,344円 18.01%
配当
収入
還付される所得税 配当税率
(所得税+住民税)
総合課税 申告
分離課税
100万円 137,835円 137,835円 14.22%
200万円 275,670円 246,864円 14.22%
300万円 413,505円 331,549円 14.22%
400万円 551,340円 416,234円 14.22%
500万円 689,175円 500,919円 14.22%
600万円 741,613円 585,604円 15.64%
700万円 775,248円 670,289円 16.93%
800万円 792,220円 754,974円 18.10%
900万円 795,225円 839,659円 18.67%
1000万円 747,793円 924,344円 18.76%

所得税の配当課税方式を総合課税と申告分離課税でそれぞれ還付額を記載しました。還付額が少ないほうは選ばないので見え消しにしています。

年間配当500万円以下であれば独身世帯で配当税率12.22%以下になります。家族世帯であれば配偶者控除や扶養控除が適用されて、さらに配当税率は下がります。

住民税は申告不要を選択することで前年所得がゼロになりますから、翌年の国民年金は全額免除、国民健康保険は7割免除が適用できます。

結果として、単身世帯の社会保険料は年3万円以下、家族世帯(夫婦+子ども1人)の社会保険料は年5万円以下まで抑えられます。

仮に年間200万円の配当収入があれば、税金と社会保険料を差し引いても170万円以上は手元に残すことができるわけです。

また、NISA口座を活用すれば5年で600万円分の非課税枠が使えるので、配当にかかる税率をさらに下げることも可能です。

配当税率の差

米国株の配当収入だけのときと比べて、日本株とイギリスADRの配当を含んだほうが税制面で有利な結果が出ました。

そこで、具体的に年間配当別の税率差がどれくらいなのか計算してみます。

配当税率(所得税+住民税)の差

配当収入米国株
100%
米国株80%+
英ADR15%+
日本株5%
100万円14.22%11.78%2.44%
200万円14.22%12.22%2.00%
300万円14.22%12.22%2.00%
400万円14.22%12.22%2.00%
500万円14.22%11.33%2.89%
600万円15.64%13.13%2.51%
700万円16.93%14.41%2.51%
800万円18.10%15.59%2.51%
900万円18.67%16.65%2.02%
1000万円18.76%18.01%0.74%

年間配当900万円以下のときに、イギリスADR15%+日本株5%を混ぜることで配当税率が2%以上低くなりました。やはり配当の税制面では、外国所得税0%のADRや日本株のほうが有利です。

一方で、ADRや日本株は米国株と違って25年以上連続増配銘柄が非常に少ないという欠点があります。

ここまで解説してきたように配当の二重課税が発生する米国株でも、外国税額控除を使うことで配当税率は10%代後半になるケースがほとんどです。

ADRや日本株の配当税制は米国株よりも有利ではありますが、 優良米国株以外の銘柄に無理して投資するほどのメリットではありません。

ADRや日本株のなかから25年以上連続増配中の割安株が出てきたとき以外は、割安な優良米国株に投資するのが賢明な判断と言えます。

米国株の配当金生活は株安よりも円高リスクに注意

これまで世界的な不況が起こると、たびたび為替レートは円高に動いてきました。日本では円ベースの生活になりますので、急激な円高が起こるとドルベースで受け取る配当金は円換算で減少してしまいます。

仮に世界的な不況で株価が大暴落したとしても、25年以上連続増配銘柄に分散投資していればドルベースの受取配当金が大きく減るようなことはないでしょう。それよりむしろ円高リスクのことを考えておいたほうが、よほど現実的なリスクヘッジになります。

では実際にリセッションが発生すると、どれくらい円高に動くのでしょうか? 100年に一度の不況と呼ばれたリーマンショックのドル円チャートで確認してみます。

ドル円チャート(2007年~2015年)
期間:2007/1/2~2015/1/2

2007年~20012年にかけて1ドル=123円から75円近くまで円高が進みました。トップからボトムまで約38%の円高です。

今後リセッションが発生して世界的な不況に入ると、このように円高が長期で続くことも考えられます。ギリギリの配当金で生活していると、円高による受取配当金の減少により保有している米国株を売却しないと生活できなくなってしまう可能性も出てきます。

よって、持続可能な配当金生活を送るには最低限生活に必要な配当金+30%以上の余裕をもっておくことが大切です。

長期的に増配を続けてきた優良銘柄に分散投資していれば株価の含み損は時間とともに解消される可能性が高いため、株式を売却することにさえならなければ長期的に安定した配当金生活が現実的なものとなります。

配当金生活の税金と社会保険料まとめ

配当金生活では所得税と住民税の配当課税方式を正しく選択することで、税金と社会保険料を抑えることができます。なかでも、住民税の配当課税方式を申告不要することが配当金生活の社会保険料を抑える重要ポイントになります。

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