米国株に起こる配当の二重課税は、確定申告の外国税額控除をすることで解消します。ここでは参考情報として、外国税額控除を最大限利用した場合に米国株の配当税率がどの程度になるかをご紹介します。
この記事は、技術評論社から出ている著書の中身をブログ用に見やすく編集したものです。
出版社のご厚意で本の無料公開が実現しました。ぜひ最後までお読み下さい。
クリックできる目次
年収ごとの「米国株」配当税率一覧
米国株の年間配当10万円、30万円、50万円、100万円の4パターンで年収ごとの配当税率がどう変化するか試算します。
試算条件
具体的な試算条件は次のように設定しました。
- 基礎控除:48万円
- 給与所得控除:給与収入に応じた控除額
- 外国税額控除の繰越控除制度:適用なし
基礎控除と給与所得控除は令和4年(2022年)の税制で試算します。なるだけ多くの人の参考になるよう、最低限の控除以外は適用しない条件にしました。
それともうひとつ、試算に必要な条件として勤務先の源泉徴収額と社会保険料を次のように設定します。
【試算条件】源泉徴収額と社会保険料
額面年収 | 勤務先の 源泉徴収額 | 社会保険料 (源泉徴収) |
---|---|---|
100万円 | 0円 | 161,000円 |
200万円 | 27,800円 | 309,000円 |
300万円 | 55,600円 | 474,000円 |
400万円 | 86,400円 | 619,000円 |
500万円 | 142,500円 | 748,000円 |
600万円 | 208,300円 | 914,000円 |
700万円 | 319,200円 | 1,075,000円 |
800万円 | 484,600円 | 1,174,000円 |
900万円 | 659,400円 | 1,226,000円 |
1,000万円 | 832,800円 | 1,283,000円 |
上記の「額面年収」は、ボーナスも含めた額面年収になります。「勤務先の源泉徴収額」は、源泉徴収票に記載されている『所得控除の額の合計額』のことです。この源泉徴収額に住民税は含まれておらず、所得税だけの金額を記載しています。
「社会保険料(源泉徴収)」は、40歳未満かつ独身の標準的な金額を設定しました。1年分の合計額です。
以上で試算に必要な条件が揃いました。それでは、年収別「米国株」配当税率に移りたいと思います。米国株の年間配当10万円、30万円、50万円、100万円の4パターンで試算した配当税率は次のようになりました。
米国株の年間配当が税引前10万円のケース
- 外国所得税:10万円×10%=1万円
- 国内所得税:9万円×15.315%=1万3783円
- 国内住民税:9万円×5%=4500円
額面年収900万円以下のときは、配当税率7.1%~16.5%に収まりました。額面年収1000万円のときだけ所得税の還付額が出なかったため、申告不要を選択しています。
米国株の年間配当が税引前30万円のケース
- 外国所得税:30万円×10%=3万円
- 国内所得税:27万円×15.315%=4万1350円
- 国内住民税:27万円×5%=1万3500円
額面年収1000万円を除いて配当税率は10%代後半になりました。所得税の課税方式は額面年収700万円以上で申告分離課税に切り替わっています。
米国株の年間配当が税引前50万円のケース
- 外国所得税:50万円×10%=5万円
- 国内所得税:45万円×15.315%=6万8917円
- 国内住民税:45万円×5%=2万2500円
額面年収600万円と1000万円を除いて配当税率10%代後半に収まりました。こちらも額面年収700万円以上で所得税の課税方式が申告分離課税に切り替わっています。
米国株の年間配当が税引前100万円のケース
- 外国所得税:100万円×10%=10万円
- 国内所得税:90万円×15.315%=13万7835円
- 国内住民税:90万円×5%=4万5000円
米国株の年間配当100万円でも、15.4%~21.3%の配当税率に収まりました。そこまで高い配当税率にはならないですね。
上記の結果をまとめると、ほとんどの年収で米国株の配当税率は10%代後半に収まりました。きちんとベストな課税方式の組み合わせを選択すれば、米国株の配当でもここまで税率が低くなります。
米国株の最終的な配当税率を求める手順
上記の試算結果で示した配当税率は、次のような手順で計算しています。
- 配当を確定申告に含めることで還付される所得税額を求める
- 配当を申告に含めることで還付される住民税額を求める
- 「証券会社で源泉徴収された28.284%の税額-(所得税と住民税の還付額)=配当にかかる税額」を求める
- 米国株の配当税率=配当にかかる税額÷米国株の年間配当
①と②は配当を申告に含めるときと含めないときの還付額の差になります。申告不要を選択すると、ここはゼロになります。
③では二重課税された源泉徴収額から還付額を差し引くことで、配当にかかる最終的な税額を求めています。そして最後に、④で最終的な税額から税率を計算するという流れです。
具体例として、年収500万円のサラリーマンが年間50万円の米国株配当金を受け取ったときに、最終的な配当税率が何%になるか計算してみましょう。
還付額が最大になる配当課税方式の組み合わせ(所得税:総合課税/住民税:申告分離課税)を選択した結果、還付額はそれぞれ次のようになりました。
それでは配当税率の計算に入ります。実質的な税金がいくらだったかが分かればいいので、やることは「源泉徴収額-還付額」です。
- 外国所得税:50万円×10%=5万円
- 国内所得税:45万円×15.315%=6万8917円
- 国内住民税:45万円×5%=2万2500円
上記の源泉徴収額から所得税と住民税の還付額を差し引くと実質的な配当税額が求められます。所得税と住民税をまとめて計算したのが次の式です。
(5万円+6万8917円+2万2500円)-(4万2277円+4681円)=9万4459円
今回は米国株の配当50万円に対して9万4459円の税金がかかることがわかりました。あとはこれらを割り算すると税率が求められます。
9万4459円÷50万円=18.89%
以上より、米国株の配当にかかった税率は合計18.89%と求めることができました。
個々の具体的な税率を知りたいときは
ここでの試算結果は、最低限の控除だけを適用したときの配当税率です。配偶者控除や扶養控除などが適用されることで、同じ年収、年間配当でも税率が増減する場合があります。
個々の税率を知りたい方は、確定申告書等作成コーナーで試算してみると正確な数値が把握できます。
Check 【米国株の税金】外国税額控除の確定申告方法を画像付きで解説
配当きぞくん
条件にあわせて数値を入力するだけだから意外と簡単なのじゃ。
Check 「米国株投資本の無料公開ページ一覧」に戻る
資産運用の知識